大阪高等裁判所 昭和45年(く)58号 決定 1970年11月05日
少年 D・T(昭二七・一・二二生)
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告理由の要旨は、本件はむしろ刑事処分に付すべき事案であつて、これを実質上刑事処分より重い少年院送致の保護処分に付した原決定は妥当でない、というものである。
しかしながら、論旨は、保護処分が刑事処分よりも実質的には重いとする誤つた前提のもとに、少年について不利益な処分を主張する不適法な抗告理由であるとともに、各関係記録に徴すれば、本件事案は、不良交友にかかる仲間数名と共謀し、他人の現金、預金通帳等を窃取したうえ、この通帳を用い、他人名義の払戻請求書を偽造行使して、他人の預金一二万円を騙取し、これらの犯行によつて家庭裁判所の試験観察に付されたにもかかわらず、なお盛り場等に出入りを続け、仲間とともに婦女を自動車で誘い出し、車内でこもごもこれを強姦したというものであつて、その素行の荒廃と強度の悪性とは、もはや指導力の乏しい家族等の監督看視に委ねがたい域に達しているものと考えられ、少年を強力な矯正施設に収容して、日常の起居を通ずる適正な補導に託することにした原決定の処分は、事案に照らして最も妥当な措置というべきであるから、論旨は結局採用に値しない。
よつて、少年法三三条一項、少年審判規則五〇条により本件抗告を棄却し、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 三木良雄 裁判官 西川潔 金山丈一)